コーヒードリッパーに溝というか、凸ボコッとした突起の線状のものがありますでしょ。あれ「リブ」って言います。英語で「ろ骨・アバラ骨」の意味ですね。で、このリブがあることで空気が抜けて、おいしくなるそうなんです。でもこれが長年ずっと疑問だったんです。
「本当かなあ?」って、気になっていました。この「リブ問題」に終止符を打とうと思います。炎上しないことを祈りつつ、決死の覚悟で書きます。
リブの効果
リブがあると何がどう違うのか。メーカー、プロ、マニア、いろいろ説があるわけですが、おおかた次の3つに集約されます。
- 空気が抜ける
- お湯の流れが変わる
- お湯が落ちる時間が変わる
実は私はどれも怪しいと思っています。なぜかというと、
空気が抜ける説
まず一番耳にするのが、空気が抜けるというもの。東京の老舗自家焙煎店「カフェバッハ」の田口護さんは台形ドリッパーをお使いですが、リブによって蒸らしの時に空気が抜けて、きれいにハンバーグ状に膨らむと言われています。
疑問点「空気が紙を通り抜ける?」
紙は確かに通気性はあるでしょうが、コーヒー豆から発生する微小なガスが紙を通り抜けて、横から出るって思えないんですよ。気体は通りやすい方に行きますからね、紙は通気性があるとはいえ、ペーパーフィルターに「ふーっ」と息を吹きかけても、紙を通り抜けて反対側で空気を感じないでしょ。息ですら通り抜けないのに、コーヒー豆から発生する微小なガスが通り抜けるとは考えにくいなあ。
お湯の流れが変わる説
これはドリッパーを作っているメーカーがよく言ってることなんだけど、ハリオの「V60」もスパイラル状に曲線になっている。
キーコーヒーの「クリスタルドリッパー」はクリスタル状にカットされていて、液体がジグザグに進むというもの。
疑問点「紙フィルターしてるからお湯の流れには影響しないのでは?」
ドリッパーに水道をじゃーって流すと、確かにリブによって水の流れはできるんだけど、紙フィルターをつけると、水の流れは無くなりました。リブは水の流れに関係ないんですよ。紙フィルターを通過した後の液体の話だとしても、それこそ味とは関係無いでしょ。抽出した後の液体がどう流れようと味とは関係無いと思うんだ。
お湯が落ちる時間が変わる説
「リブがあると、空気の通り道ができて、お湯が落ちやすい。」というのをツイッターで見かけましたが、これがちょっとニュアンスが微妙なんですよね。
「空気の通り道」ということだけど、リブがあるなしによって変わるのは、単にペーパーフィルターの外に空間があるから、紙からお湯がしみ出やすいということだと思うんですよ。
出る量が変わるんじゃないかと思うんです。出る量が違うから速度が違うとも言えるんですけどね。空気が通るからではなく、紙とのあいだに空間があるかないか。
リブ効果の自説
私は自作のバネドリッパーを使っていますが、バネドリッパーは全くリブ無いじゃないですか。そうすると、下に落ちる流れと別に、横からしみ出るように落ちる液体があるんですよ。それは注ぐお湯の量によっても変わるし、プールするお湯が多いと、横からしみ出る量も多い。紙フィルターにぴったりくっついてる「リブ無し」と紙フィルターの外に空間を設ける「リブ有り」とでは、このしみ出る量の違いがあると思うんです。しみ出るか出ないかの差によって、お湯の貯まり具合が変わるんじゃないかと。
- リブがある→紙フィルターの外に空間がある→しみ出る→お湯が貯まらない
- リブがない→紙フィルターとの間に空間がない→しみ出ない→お湯が貯まる
リブの有無は空間によるお湯が貯まるかどうかの違いというわけです。
リブ無しドリッパーを作る
では、リブのない状態にするために、紙フィルターに密着するものを作ります。クリアファイルを使ってみます。V60のドリッパーに押し当てて、外からセロテープで固定して、切っていきます。V60と同じ大きさ、同じ穴の位置になるように。
おおできた!いいじゃん。「リブ殺しフィルター」とでも名付けときましょうか。
リブ有り無しで飲み比べ
左が通常のハリオV60のリブのあるドリッパー。右が先ほどクリアファイルで作ったリブが全くない状態にしたもの。同じ条件で淹れていきます。蒸らしの時の膨らみはどうでしょう。
特に変わらないですね。お湯の流れがが変わるのでしょうか。お湯が落ちる時間が変わるのでしょうか。
特に変わらないですね。じゃあ、お湯が貯まりやすいかといえば、これもそうでもないかな。明らかに違うというのはない。私は4回に分けて注ぐので、1回に注ぐ量が少ないというのもあります。
できました。では飲み比べてみます。
温度を下げながら、ちょびちょび飲み比べましたが、
リブ無しの方がやや濃くて苦味があるかな。
リブ有りの方がややスッキリな感じがある。
でも、目隠しテストされたら、もうわからないぐらいの差。「そう言われたらそんな気がするかも〜」のレベル。
お湯を貯める淹れ方だともっと味の差があったのかも。
あと2杯分とかお湯を注ぐ量が多いと、また違うのかもね。
やっぱりコーヒーの味を形成するのは、
- コーヒー粉の大きさと量
- お湯の温度と量
- コーヒーとお湯の接触回数と接触時間
この6つの関係で決まると思います。
今回は「リブなしの方がやや接触時間が長いような味になったんじゃないかな」とは思いますが、1回の実験ではなんとも言えないっすね。かといって、もう一回やろうとも思わないし、だいたいわかったから気が済んだ。
リブの効果まとめ
どっちでもいいや w
メーカーに任せた。ウンチクで作るもよし、売るためにデザインで作るもよし。
円錐形ドリッパーでリブのありなしで劇的に味が変わることはない。淹れ方に寄る部分が大きい。コーヒーバカはリブが無かったら無かったで使っているうちにコーヒー粉の大きさやお湯の温度を下げたり、お湯を注ぐ回数と量を変えたりして、自分の好みの味に調整するから、ま、結局は一緒なんじゃないの。
普通の人が市販のコーヒー粉で一般的な淹れ方をすると、リブがないと抽出オーバーになりがちなんでしょうね。お湯の抜けをよくして、なんとなく淹れても、抽出オーバーにならないようにしてるんじゃないかな。
一般的な人の使い方を考慮して、誰でもある程度おいしく淹れられるように、リブをつけていると考察しました。実際、粕谷哲さんのプロ使用のドリッパーはリブが小さく、逆にお湯が溜まりやすくなっています。
コーヒーの挽き目を変えて、温度と量を計りながら淹れるようなマニアックなヤツであれば、リブがあっても無くても味を調整できれば、関係ないのかもよ。
そこまで味に影響を及ぼすものでもないので、リブについて論ずることも、もうしないかも。ただ「空気が抜ける」って表現はやっぱ違和感があるかな。ブログのネタが無くなったら台形フィルターでもやってみようかな。
今日も寄っていただきありがとうございます。旦部先生から解説いただいて納得したので追記しておきます。