定期購読しているコーヒーマガジン「Standart Japan 第8号」が届ききました。今回の内容はこちら。
気候変動やそれに伴う疫病の流行によって、コーヒーの栽培に適した土地は 2050年までに現在の約半分に減ってしまう可能性があると言われています。この「コーヒーの2050年問題」に関する話からスタートする今号。生豆の新しい値付けのあり方について、そしてお茶の栽培に焦点をあてて歴史や環境に迫ります。
Meet Your Baristaシリーズは、2018 年のワールド・ブリュワーズ・カップ・チャンピオンに輝いたMAMEの深堀 絵美さん。カフェでの体験を大きく左右する要素のひとつである音楽について考えたあとは、数多くの競技会入賞者を輩出するOnyx Coffee Labの創業者Jon Allenさんが自身の経験から語る組織のあり方について。Standartのお取扱店をフィーチャーするMeet Your Stockistsでは静岡のロースターをご紹介します。
コーヒー業界でも飲み終わったコーヒーの行く末を変えようと努力する人たちが存在します。「コーヒーのアップサイクル」ではコーヒーカスの商品化に取り組むmanu coffeeの取り組みをご紹介。コーヒーの可能性に思いを馳せた後は、「好きな」コーヒーと「美味しい」コーヒーの違いについて哲学します。Meet Your Guestでは、コーヒー界のアップサイクルブランドKissacoの岡本 由梨さんをインタビュー。最後はおなじみのシティガイド。今回は独自のコーヒー文化を持ちながらも、国外から入ってくるアイディアを柔軟に受け入れてきたアテネをご紹介!
お試しコーヒーは、スウェーデンの名門ロースター・カフェ、Drop Coffee Roasters。数々のバリスタ・チャンピオンやロースター・チャンピオンを輩出してきた彼らのコーヒーをご自宅までお届けします!
ということで、この中から気になるトピックを3つ挙げてみましょう。
種から始まるストーリー
2050年までに、世界中のコーヒーノキがすべて植え替えられると言われているそうです。しかも「コーヒーもF1種になるかも!?」という話。
さび病に強く、COEでカップクオリティ90点以上のF1種が登場したが、まだ開発コストがかかるから小規模農園は恩恵に預かれないという内容でした。生産者には収穫量、消費者には味という恩恵をもたらすのでポジティブな内容です。
ここからは本には書かれていない私の興味と感想なのですが、
F1種というのは、違う品種をかけあわせた雑種の1代目のこと。味のいい品種と病気に強い品種をかけ合わせて、1代目は各々の良い性質を引き継ぐんだけど、その2代目、3代目になると、悪い性質のものが生まれてしまうので、1代目だけを使えば収穫量が高いよね、というのがF1種です。
世間ではこのF1種に警笛を鳴らす声もあります。掛け合わせ自体は問題ないんだけど、世間で問題視されているのは「雄性不稔」という、雄性器官である花粉や胚のうを正常に花粉形成ができないようにしてしまうこと。こういった作物を食べると、人体に影響が出るんじゃないか。年々、人間の男性の精子の数が減っているのは、雄性不稔のF1種と関係があるのではと疑問視されています。
F1種イコール悪いもの、というネガティブな印象がついていますが、この記事を読む限りでは、F1種のコーヒーノキに雄性不稔は使われていないようですし、コーヒーの場合、種を焼いて煎じて飲むだけだから、実を食べるわけじゃないので、人体に影響ないだろうと、思うんだけどね。気になるトピックです。
Kissaco
「KISSACO(キッサコ)」は日本のバッグのブランドです。使用済みのコーヒーの麻袋を再利用したバッグで、クオリティが高い。麻袋を利用した商品はたまに見かけていたけど、キッサコが違うのは麻袋にビニール加工しているので、耐久性も匂いも触り心地などの、麻袋のデメリットを全部クリアしていて、一目見て「これはいい!」って思って、私もトートバッグを愛用しています。
これがなんと女性1人で作っているらしいんです。しかも、誕生秘話がおもしろい。お父さんが麻袋をバックにしてみないかと持ってきた、販売会でたまたまデパートのバイヤーさんの目に留まった、とか。あと作っている人の考えが知れるというのはいいね。共感するクリエイティブの裏側に共感する考えがあるというのはおもしろい。
好みの問題
コーヒーを飲んだり、淹れたりしていると「これをおいしいと思うのは自分だけでは?」とか、お店で出されたコーヒーに「え?これおいしいの?」と不安になり「ま、好みですからね」と納得させる体験は誰もがあるでしょう。こういった「好みの問題」はとっても関心の高いテーマなんだけど、この記事では、哲学者の考えを引用して展開しているのでムズい…。ざっくりこんなカンジってまとめてみました。
まず「好みは人それぞれ」です。これは誰もがそう思えますよね。次にセンスや知性もない下品な「悪趣味なもの」というものもありますよね。そして「悪趣味だけど好き」という感情もありますよね。
で、仮に、好きかどうかで物事の価値が決まるとすると、「悪趣味だけど好き」というのは、矛盾ではないでしょうか? 好きなものが価値なのだから、好きなら悪趣味ではないわけです。なのに悪趣味と認識しながらも好きと言うわけです。
次に二人の哲学者の認識論を紹介します。イギリスの哲学者ジョン・ロックは物事の性質を2つに分けました。「第一性質」は客観的、科学的、計測可能な特性。「第二性質」は人の知覚、感覚によって存在する性質。よってコーヒーの香り、味、色、温度などは、物理的な第一性質に対する解釈の第二性質と言うわけです。
また、スコットランドの哲学者デイヴィット・ヒュームは「世界の様相に対して私たちが示す何らかの反応が価値判断の根拠になる」と主張します。第二性質が価値だというわけです。さらにヒュームは「特定の物事に関する私たちの体験には先入観や偏見がある」と言います。人の知覚の第二性質には先入観や偏見があるというわけです。
ここで、バリスタ経験のある著者の話がきます。「地元のファミレスのコーヒーがまずいことはわかっているが、学生時代に深夜に友達と飲んでいた懐かしい思い出があるから、私は今でもこのコーヒーが好きだ」ということです。
第一性質は悪いが、第二性質は良いというわけですね。
「悪趣味だけど好き」というのは、そこにその人の何かしらの特別な思いや体験があるからというわけです。
そして、好きなコーヒーとおいしいコーヒーが必ずしも一致しない理由もここにあるという話でした。
まとめ
小難しく展開して、ちょっと脱線したり、ユーモア入れたり、書きながら自分に酔ってるきらいがあるからなあ。おっと、まとめるのに時間がかかったので、ブロガー目線でついディスってしまいましたが、ブログ、ツイッター、ネットニュース、普段接しないコーヒー情報は大事です。コーヒーのブログなんて個人の感想にすぎませんからね。こんな感じでツッコミながら読むのも楽しいコーヒー読書体験です。今号もいい内容でした。
今日も寄っていただきありがとうございます。ちゃんとした正確なコーヒー情報は貴重ですよ。
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