コーヒーをハンドドリップしていて注ぎ方だけで味が変わると感じたことはありませんか? これ実は科学的にそうなんですよ。同じコーヒーで量も同じなのに、注ぎ方だけで味が変わるんです。「コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか 」を読んでいたらその理論が書いてあったので紹介しましょう。また、その理論を確かめる簡単な実験をやってみました。これを知れば科学的においしいコーヒーを淹れることができるようになります。
ドリップは透過抽出
コーヒーを抽出するには2つの方法があります。浸漬抽出と透過抽出。浸漬抽出とはフレンチプレスのようにコーヒー粉をお湯にひたして味をだすタイプ。ドリップはコーヒー粉にお湯を通して味をだす透過抽出。この2つによってもコーヒーの味の成分の出方は変わります。透過抽出の味が出るメカニズムを詳しく見ていきましょう。
透過抽出は段理論
コーヒー粉をお湯が通って行く透過抽出の過程を図にしたものです。仮にコーヒー粉の層を段に分けて考えます。これを段理論と言います。
①コーヒー粉の層の段数を通っていくほど、コーヒーの成分が抽出されていきます。
②1度に注ぐお湯の量が多いと段数が少なくなり、抽出される成分が少なくなります。
この段数を理論段数と言い、段数が多いほど、溶け出す成分も多くなります。
コーヒー粉の高さ以上にお湯が貯まってしまうのは、理論的には段数が減ってしまうことになります。
点滴水出しコーヒーが濃いのも、お湯を注ぎ足して2・3投するよりも、お湯を落しきって4・5投する「4:6メソッド」が味がはっきりするのも、お湯を適当にドバーって注ぐとおいしくないのも、この段理論で説明できますね。
※かなりざっくりした化学反応のクロマトグラフィーの原理を理解するための例ですので、詳しくは「コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス)」をお読みくださいね。
しかし、知ったからにはやるしかないのがこのブログのさだめ。この理論段数を味わってみたい。
理論段数の実験
●注ぐお湯の量が少ないと、理論段数が増える→抽出される成分が多い。
●注ぐお湯の量が多いと、理論段数が減る→抽出される成分が少ない。
ということであれば、左から①②③の順番に以下の3つの設定で淹れてみましょう。もちろん使うコーヒー豆など同じ条件になるようにしました。
①ハリオV60ドリッパーでお湯を2投する
②ハリオV60ドリッパーでお湯を5投する
③ペーパーフィルター半分に折ってコーヒー粉の層を深くしてお湯を5投する
①と②は1度に注ぐお湯の量と回数の違い
②と③はコーヒー粉の層の高さの違い
段理論が正しければ、①②③の順番で味が濃いコーヒーになるはずです。
では、お湯を注いでいきます。撮影できないぐらい3つはさすがにメンドくさいぞ。淹れ終わって③の深層ドリッパーが倒れるというアクシデントもありましたが、コーヒーに影響がなくてよかったです。
できました。では、いつもの淹れ方にもっとも近い②を基準に飲み比べてみます。
②は甘みと果実味がありスッキリと、いつもの味。
①は味が薄い。明らかに濃度的に薄く、おいしいとは言えないレベル。
③は……
マジか!……スッキリしつつ、甘みと果実味がはっきりと強く、う、う、うまい!
今日は妻もいるので、何も情報を与えずブラインドテストで飲み比べてもらいます。普段は私が焙煎した豆は濃いすぎるとか言って飲まないのに、③を「これ甘いやん!」と高評価をいただきました。単純に味だけの第三者評価も同じになりましたね。これはかなりいいんじゃない?
実は③の深層ドリッパーは以前「ドリッパーの角度が深いとうまいのか?」で、実験したことがあったんだけど、その時はすごくまずかった。
今回のポイントは粗挽きでお湯が貯まらないようにしたということ。挽き目が細かいと、お湯が溜まってしまい理論段数が減り、しかもコーヒー粉の層が深いので、コーヒー粉とお湯が長時間接して抽出オーバーになってしまうのかも。ここでも段理論で説明できますね。
まとめ
ドリップは理論段数。お湯が貯まらないように数回に分けて注ごう
さらにコーヒー粉の層を深くするとおいしい味がはっきりと感じられました。こういう飲み比べ実験はなんとなく飲んでるうちにおいしいコーヒーを先に飲んでしまうんですよね。写真で明らかでしょう。正直ちょっとビビるレベルです。これは大発見なんじゃないでしょうか、ドキドキ。これバズるんじゃね?




次回までに何回かやってみて、③のDIY深層ドリッパーの作り方と淹れ方のレシピを紹介しましょう。
今日も寄っていただきありがとうございます。わかった!って実感が一番おもしろい遊びだよね。
もう一杯おかわりいかがですか





